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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

ピアノ協奏曲<地下の迷宮>のふたつの主題 

Posted on 05:47:06

 
 前回のブログ記事では、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番第1楽章のふたつの主題をめぐって、一見、古典派のソナタ形式の枠組からの逸脱に見える再現部に関して、私の見解を述べておきました。
 今回は、そのピアノ協奏曲や第24番を参考にして創作した、ピアノ協奏曲<地下の迷宮>のふたつの主題について、作曲者の意図を明かしておきます。


 
 古典派のソナタ形式の概略については、前回の記事で説明しましたので、ポイントになる部分についてのみ、再び解説しておきます。
 交響曲や弦楽四重奏曲では、[提示部+展開部+再現部]の3部構造を持つ古典派のソナタ形式は、協奏曲では若干異なる構図となります。提示部がふたつあり、[第1提示部+第2提示部+展開部+再現部]の、実質的には4部構造となります。ピアノ協奏曲では、第1提示部はオーケストラのみの演奏で、第2提示部でピアノが登場します。
 短調の場合、提示部における[第1主題―第2主題]の調性関係は、[主調―平行長調]となります。再現部では、その調整の対立は解消され、[主調―主調]となりますが、[主調―同名長調]となる場合もあります。
 モーツァルトのト短調のふたつの交響曲に、計4つのソナタ形式楽章がありますが、すべて同一のパターンに収まっています。提示部では[ト短調―変ロ長調]、再現部では[ト短調―ト短調]で、ソナタ形式の約束事が守られています。ピアノ協奏曲第24番もセオリー通りです。
 それに対し、ピアノ協奏曲第20番の第1楽章では、ふたつの主題に関して、第1提示部、第2提示部、再現部において、[ニ短調―ヘ長調]の関係が維持されています。セオリーから逸脱しているのです。

 
 さて、私が作曲したピアノ協奏曲<地下の迷宮>では、ふたつの主題の調性に関して、敢えて、逸脱していたモーツァルトの第20番の第1楽章を踏襲してみました。
 すなわち、第1提示部と第2提示部において、[ハ短調―変ホ長調]の対立関係を提示し、再現部では、解消されるべき調性の対立を、解消せず、[ハ短調―変ホ長調]の関係を維持したままにしたのです。
 短調の曲では、楽曲の明暗の感触をどの程度にするか、しばしば悩みます。ところどころ長調に転調することで、暗すぎる曲に明りを灯すことができます。そして、短調の曲に占める長調の領域の分量が、作品の印象を大きく左右することになります。
 そのようなバランスに対する配慮から、再現部では、第24番ではなく、第20番のパターンを見本として採用したのでした。
(いまから振り返ると、作曲時のあまりよくなかった体調も影響して、自覚せずに、暗すぎる[ハ短調―ハ短調]のパターンを見送った可能性も棄て切れませんが)
 [ハ短調―ハ長調]という選択肢もあったのですが、それではその部分で明るくなりすぎ、曲調が破壊されてしまう危惧がありましたので、採用しませんでした。
 セオリー違反であることは承知の上で、再現部でも[ハ短調―変ホ長調]としました。 モーツァルトは、ふたつの主題の調性関係では解消されなかった対立関係を、提示部と再現部での中心となる調の違いと、終結部の違いで解消に導いていました。私も、その例に倣いました。
 第2提示部のコデッタ(小終結部)では、天上界からの光が差し込むような明るい曲調で、変ホ長調で閉じて、展開部に向かいます。それに対して、再現部では第2主題以降の曲調を提示部よりもやや暗くし、カデンツァはハ短調を基調にして、調性の対立を和らげています。そして、コーダにおいて、第2提示部のコデッタ風に入りつつもハ短調に落ち着き、この楽章は主調のハ短調で閉じて、対立は完全に解消されます。
 このように、作品の明暗のバランス感覚への配慮から、敢えてセオリーから逸脱し、その逸脱への対応のため、再現部の後半部分の曲調を微調整したのでした。
 
 ピアノ協奏曲<地下の迷宮>については、数名の方々から好意的な感想をいただいたのですが、ふたつの主題をめぐる調性の関係についての言及はありませんでした。ひょっとすると誰にも気づかれていないのかもしれないと思い、作曲者自らがここまで言ってしまうのははしたないと感じつつも、書き残しておくことにしました。

<地下の迷宮>を、今ふたつの主題に集中しながら聴き直してみました。再現部で[ハ短調―ハ短調]のパターン(24番型)を採用してもよかったかもしれない、と感じました。
 再現部の異なるヴァージョンを編曲してみたくなりました。

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