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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

時代精神の種子としての大乗仏教思想 

Posted on 11:12:47

 
 前回のブログ記事で、「今後のあるべき時代精神や価値観と、大乗仏教思想は深く関与していくであろう、と私は予感しています」と記しました。
 そう思うようになった理由を、今回は述べてみます。

 
 
 さまざまな領域から発せられるようになってきた、近代合理主義の限界のシグナルには、いくつかの共通点があります。
 科学技術、医療、経済、教育などの分野で噴出してくる諸問題の根源には、近代的自我意識―個人主義と自己主張―と、競争や支配や攻撃性を肯定する弱肉強食的な価値観が、横たわっているように思われます。
 根本的問題は、「自分と他者や周りの世界との関係に対するバランス感覚」なのです。
 このバランス感覚にかなりの偏り・歪みが生じているのに、それに無自覚な状態で近代化が先鋭化してきた、時代が動いてきてしまった、というのが、私なりの近代化に対する現状認識の総括です。
 
福島原発事故も、経済的価値観の過剰肥大も、イジメの問題も、現代音楽の聴衆軽視も、佐村河内氏の代作問題も、STAP細胞論文捏造疑惑問題も、このバランス感覚の不全の症例と見ることもできます。「そこまでしてまで」自分や自分たちの欲求や願望や価値観を強引に実現させようとする点において、共通します。
 
 「自分と周囲とのバランス感覚」の不全が、現代の根本問題であるならば、このテーマと関わりある探究は、東洋でも西洋でもなされてきましたから、大乗仏教思想にとくに注目しなくてもよいかもしれません。西洋の認識論・存在論や、心理学の中にも、参考にすべき見取り図がいくつもあります。
 しかし、私から見ると、この問題に対処するのに大乗仏教思想がとりわけふさわしい必然性がいくつかあるのです。
 
 [理由その1]
 ローカルな理由ですが、日本人になじみがあり、日本人の精神的古層に沈殿している思想であるから。
 近代化の過程で忘れ去られたかもしれませんが、捨ててはいないでしょう。
 日本人なら自ずと納得のできる内容を持っているからです。
 
 [理由その2]
 大乗仏教の目指してきた境地は、近代科学合理主義に潜む方向性、「自然の管理・支配」とは対照的に、「心・精神の統御」であるから。外向きの方向性を緩和し、補いあう志向性を持っているからです。
前回の記事では、「心・精神の自発的統御」の可能性を巡って、論じてみました。
 
 [理由その3]
 西洋哲学では、人と自然、精神と物体、といった二元論的対立を前提として、その問題をどうするか、といった構図で議論がなされるのが一般的です。そして、我、実体、といった「有」の概念をめぐる哲学が主流でした。近代的価値観に批判的な思想であっても、根本的に方向性については、近代の価値観と兄弟なのです。
 それらとは異なる筋道―諸行無常、諸法無我などを核理念とする「無」の哲学の筋道―で進展してきた東洋の仏教思想の系譜のほうが、現代の根深い状況に対する異なる視座、根源的異論として、より適切なのではないか、と考えるからです。
 
 [理由その4]
 根本的問題に対する、最もふさわしい処方箋だから。
 「自分と他者や周りの世界との関係に対するバランス感覚」の崩壊こそが、問題の根源であるとするならば、大乗仏教的精神のエッセンスともいえる、「菩薩」の思想(利他主義)や「縁起」(関係主義)、「一切衆生悉有仏性」の理念(共生の世界観)は、まさに急所を貫く光線となりえます。
 
一切衆生悉有仏性とは、『涅槃経』で説かれている概念で、天台宗や華厳宗などで共有されている世界観です。
 
 以上のような理由から、今後のあるべき時代精神や価値観に、大乗仏教思想は深く関与していくであろう、あるいは、関与すべきであろう、と私は考えるようになったのです。
 
 では、大乗仏教的価値観を、すでに浸透している西欧近代合理主義的価値観と、どう折り合いをつけたらよいのでしょうか。
 この論点については、次回とします。
 
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