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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

相手を愉しませること 

Posted on 15:15:24

 
 先日、職場の同僚の先生から、興味深い話を伺いました。
 子供のピアノの発表会では、身に着けたテクニックを披露しようとする傾向が強い、という趣旨の話です。
 その話に触発された思考の展開を、書き留めておこうと思います。

 
 
 その先生(父親)は、美しいピアノ曲をゆったりと鑑賞したいといった願望があったらしいのですが、見事に裏切られたようです。
 言い換えれば、「芸術を多少は期待したのに技術・技巧しか感じられなかった」ということでしょうか。
 このことは、芸術表現の根本問題のひとつと関わっていると思います。また、教育上の重要案件とも関連していそうです。
 
 フィギュア・スケート競技のジャッジの点数に、技術点と演技構成点(=芸術点)があるように、美術・音楽・舞踏などの表現には、技術的要素と芸術的表現とが分かち難く絡んできます(考察の便宜上、とりあえず両者を芸術表現におけるふたつの側面として切り分けておきます)
 子供にピアノを習わせる際、その両面を並行して習得していくように導くのが望ましいのではないかと、私は思います。
 子供にとっての芸術的側面とは、「素敵な曲を楽しんで感情を込めて弾く」という程度のことを念頭においています。
 ピアノの発表会ではおそらく、技術的習熟度が重要な評価基準とされがちなため、それに向けての準備では、正確に、高い技術水準で演奏すること、に時間と労力とが注がれるのでしょう。
 より豊かな演奏表現の追究も無視されることはないと思いますが、優先順位は下になっているのでしょう。また、演奏を楽しむことや、聴き手を配慮したり聴き手との共感を得ようとしたりすることは、軽視されがちなのでしょう。
 しかし、音楽を愛する心や、芸術性の涵養の観点からは、高等技術の修練にエネルギーを注ぐよりも、聴き手を配慮しつつ演奏を楽しむ姿勢を養うほうが、望ましいのではないかと考えます。演奏の楽しさを知れば、技術は後からでもついてくるでしょう(これは私の実感です。プロを目指すのであれば話は別かもしれませんが)
 演奏でも作曲でもそうですが、自分の技巧的能力を誇示し過ぎると、いびつな表現、ゆがんだ作品になってしまいがちです(これは私自身の作曲に対しても、自戒を込めて言っているのです)
 それに対して、芸術的に表現しようとすることは、相手を愉しませようと試みることですから、他者に対して優先的に配慮することにつながります。
 技術的要素と芸術的表現の両立、というのは、自己主張と相手への配慮のバランスをとる、という人間の存立様式の根源と結びついていると思います。
 
 それゆえ、発表会で、獲得した自分の技術的能力を示すことを重視しすぎる姿勢は、教育的観点から見ても望ましくないでしょう。
 子供は、自己のさまざまな能力を磨いていくとともに、他者とのかかわりの中で、社会性を身に付け、相手に配慮したり、共に生きていく感覚を養ったりして、大人に成長していくからです。
 残念ながら、私の属する大学の世界にも、自己の能力の提示の側面が肥大しすぎた研究者がしばしば見られます(私にもその傾向があると自覚しているので、余計に気になるのです)。自分の研究と、他の分野や社会とどのようにつながっているのかをわかりやすく提示することが、学者にとっての“芸術点”といえるのではないかと密かに思っています。
 どの分野にも散在している自己中心的過ぎる人物を創り出さないためにも、それぞれの教育機会において、自己能力の向上と他者への配慮の両面を考慮した教育の在り方を探っていくべきだと感じます。
 ピアノの指導の場においても、バランスの取れた人間的成長のためには、技術的側面(=自己アピール)と芸術表現の側面(=他者への配慮)を並行して修練していくのが望ましいと思われます。
 
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