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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

竹端寛『権利擁護が支援を変える』を読んで 

Posted on 10:39:37

 
 これは、とても“熱い”本です。
 学術書ですが、ところどころ、著者の情熱がマグマのように噴出しています。
 私とは畑違いの分野ですが、興味を惹かれたところを中心に、感想を記しておきます。

 
 
竹端寛『権利擁護が支援を変える―セルフアドボカシーから虐待防止まで―』(現代書館、2013年)
 
 竹端さんのスルメコラムの記事<『権利擁護が支援を変える』一部公開>で、上記の新刊書を“立ち読み”したところ、とても興味が湧いたので、紀伊國屋書店で購入しました。
 この著作は、障害者たちへの支援の在り方を、抑圧的でない、信頼関係が宿ったものにしていくための考え方や、その目標に向けての実践例の検討を、主要テーマにしています。
 その鍵となるのが、障害者の「権利擁護」という視座です。
 
 竹端さんの考察は、抽象的理念からの展開ではなく、自らの経験や具体的事例に基づいた思考であり、実感のこもった、説得力のあるものになっています。
 小学校時代、クラス中が巻き込まれたいじめ問題に、いじめられる側からの当事者として、人間関係の構図と構造転換を察知した竹端さんの経験が、障害者の支援・権利擁護問題への個人的原点になっているようです(序章)
 また、精神科病院における治療の実情のあまりの酷さ―虐待・無視・説明のない治療・主体的判断の剥奪など―に対する憤り、改善が進まない嘆きが、竹端さんの情熱の原動力のひとつになっているようです(第三章、第一節)
 障害者や高齢者の「当然の権利」が奪われている。それをどのようにして回復していったらいいか――
 この問題意識が、この著作の出発点となっています(序章)
 そして、今まであまり疑問視されてこなかった、支援の在り方をめぐる思考様式に、鋭いメスを入れていきます。
 支援する側/される側が、加害者/被害者の固定的対立図式に対応付けられがちですが、どちらも現実には「善と悪との間の曖昧なグレーの領域に生息している」(P.21)ことを確認したり、自らの見解を絶対的な神の視点に置いてしまい、相手を一方的に糾弾してしまいがちな認知枠組みの問題を摘出したり(終章)、しています。
 支援の現場においては、障害の当事者と管理者の双方の内在的論理に耳を傾けた上で、障害者の立場に立って、その権利を護る支援の在り方を探っていこうとするスタンスを、竹端さんは一貫して採っています。そして、その方向性に沿った実践例―人権センターの病院訪問活動、電話相談で声を聴き続ける活動、べてるの家での「自分自身で考える」営みを支援者・当事者ともに獲得していく活動など―も紹介しています。
 支援者・当事者ともに、当該の問題に対処していく過程で、自身の思考や行動の在り方を見直し、自己変革を遂げていく。それと連動しながら、その問題が変容していく――
 このような、「個人の変容と社会の変容の相互作用的展開」(P.227)というヴィジョンを、竹端さんは獲得したのでした。
 
 さらにこの展望は、単に障害福祉の問題のみならず、正論と正論とが価値対立してしまいがちなさまざまな社会問題に対しても、有効な視座となりうるでしょう。
 竹端さんの言うように、原発問題や沖縄の米軍基地問題など、対立している双方が、自身の見解・価値観を無批判に正しいものと確信している固着した姿勢からは、お互いに納得のできる着地点を探る歩みよりは難しいでしょう。
 社会の望ましい姿の方向に向けて、自分自身も変わっていかねばならない。
 障害者の問題に向き合ってきた竹端さんのこの姿勢は、さまざまな社会問題にも適用可能なスタンスでしょう。
 また、障害者から剥奪されている「当然の権利」や、主体的に考え、行動する意欲を回復していこうとする実践例は、単に障害者や高齢者に対する問題だけではなく、社会や職場の中で萎縮して生活しがちな一般の人々の主体的生き方の回復の問題にも、応用ができそうです。
 あるいは、大学教育の場で、教師と学生との抑圧的でない人間関係のあり方や、学生の人間的成長の支援にも、適用できそうな考え方・方策が随所に見られます。
 
 そうした意味で、この著作は、潜在的に広い射程をもった労作と感じました。
 

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テーマ - 障害者の人権・福祉施策

ジャンル - 福祉・ボランティア

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