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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

ディーリアスの管弦楽曲と、ブロードベントのジャズピアノとの類似点 

Posted on 11:08:48

 
 明けましておめでとうございます。
 
 ひと月ほど前、吉祥寺のディスク・ユニオンで、4枚の中古CDを購入しました。クラシック2枚、ジャズが2枚です。
 そのうちの2枚が、この冬休み中の愛聴盤となりました。今回は、その2枚のCDについて、語ってみようと思います。

 
 1枚は、ディーリアスの管弦楽曲集で、『春を告げるかっこう/ディーリアスの世界』と題されているCDです。指揮はチャールズ・マッケラス、演奏は、ウェールズ・ナショナル・オペラ管弦楽団で、1990年前後の録音集です(London, POCL-5150)
 ディーリアスらしさが、実によく引き出されている演奏で、独特の世界に陶酔していくようです。ゆったりしたテンポの微妙な移ろいが、作品の味わいを深めています。
 どの曲も魅力的ですが、とりわけ、<春を告げるかっこうを聞いて>、<イルメリンの前奏曲>、<2つの水彩画>は素晴らしい。小編成のオーケストラが控え目に紡ぎ出す、“穏やかな物憂さ”が浸透する異世界。
 ある種の宗教的境地にいざなわれている感触を抱きます。
 
上記3曲のうちの2曲は、バルビローリ指揮の1960年代の演奏のCDにも収録されています。私は、マッケラス指揮の方がより繊細な演奏になっていると感じます。テンポの起伏や音量の陰影の変化、複旋律のバランスが絶妙です。
 
 もう1枚は、ジャズ・ピアニストのアラン・ブロードベントのCDで、オーケストラとピアノ・トリオの協演となっている作品集です。タイトルは、“Developing Story―Alan Broadbent with the London Metropolitan Orchestra at Abbey Road―”で、2016年の録音です(Eden River Records, ERR-CD-02)
 タイトル曲の<Developing Story>は、ブロードベント作曲の3楽章形式の作品で、まるで後期ロマン派のピアノ協奏曲のようです。とくに緩徐楽章の第2楽章では、ドラムスが加わるまでは、ほとんどクラシックのピアノ協奏曲の風情です。オーケストラの秩序だった演奏と、ジャズ・ピアノ・トリオのビート感覚の異なる奔放な演奏との対比が、実に鮮やかで、面白い。劇的なストーリー展開を持つ映画の背景音楽を聴いているような感覚です。物語的な構成と、オーケストレーションの見事さが相乗効果を発揮して、見事な作品に仕上がっています。何度も聴きましたが聴き飽きません。
 また、オーケストラとピアノ・トリオの編曲でジャズ・バラードを演奏している数曲も、趣きがあります。とくに<Blue in Green>、<Lady in the Lake>の2曲は、ディーリアスを想起するようなオーケストレーションが施されていて、こちらでも異世界が現出してきます。不思議なことに、こちらのCDからも、“穏やかな物憂さ”の香りが発散してきます。
 ブロードベントの趣味の良いピアノを管弦楽に変容させると、必然的にこのような洗練された音楽世界が生成してくる、と納得させられます。
 
 繰り返し聴いたこの2枚のCDの音楽家、ディーリアスとブロードベントの二人の音楽作品には、類似性がある、と気づきました。
 それは、心の襞に分け入るような、複雑に入り組んだ感情を表現しようとしていることです。そしてその核心となっているのが、“穏やかな物憂さ”と形容したくなる情感なのです。厭世観や諦観が、その底流に見え隠れしているようにも感じます。
 音楽技法的には、両者とも、かなり複雑な不協和音を連続して使用し、それらのつながりが不自然にならないように工夫を凝らしているのがわかります。一見さりげない、凝った料理の味付け、となっています。
 結局、私の好みの作曲家・演奏家は、ジャンルを問わず、似たタイプに収斂してしまうのかもしれません。
 
 佳い年でありますように。

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