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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

科学における想像力と理性―ラマルクの科学論― 

Posted on 11:01:56

 
 今回もまた、ラマルクの『動物哲学』(1809年)の中で議論されている個別テーマをひとつ、紹介します。自然科学における、想像力の意義についてです。

 
 『動物哲学』の最終章、第3部第8章「悟性の主要な行為について」の中で、ラマルクは「想像力 L'imagination」という見出しの節を設け、他の動物にはない、人間独自の想像する能力について、考察しています。その節の後半で、彼は文学と科学を対比させつつ、自然科学における想像力のもつ意義について、語っています(ラマルク、高橋達明訳『動物哲学』朝日出版社、1988年、pp.441-442)
 ラマルクはここで、「科学science」という用語を、「学問分野全般」ではなく、「自然界についての知識・理論」を扱う分野を指す言葉として、用いています。つまり、19世紀中葉以降の現代的用語法となっています。
 さて、ラマルクの見解によれば、すばらしい文学には、「想像力」と「趣味の良さgout」という二つの源泉がある、ということです。それに対し、科学においては、「想像力」とそれを統御する「理性raison」のふたつの源泉が肝要である、と考えています。
 科学においては、想像力は逸脱によって誤りを導いてしまう可能性があるため、警戒すべきである、とまずは指摘します。
 しかしながら、想像力は、科学において、観察された諸事実から原理や結論を導くのに不可欠である、とラマルクは考察しています。
 そのためには、奔放になりかねない想像力を統御し、適切に導く「理性」の働きが要求される、ということになるわけです。そして、彼は次のように語っています。
 
「想像[力]を制限し、これが脇道にそれて、私たちの知識の前進を妨げないようにするただ一つの手段は、自然界に得られた対象についてしか、想像[力]が働くのを許さないことである」(p.442)
 
 この部分は、理性による想像力の制限の仕方の一例を、具体的に挙げたものと理解できます。おそらくラマルク自身が、想像力の発露に対して、「自然界に素材をもつものに限定する」という自己統制をしていたのではないか、と私には思われました。
 当時は、いまだに、キュヴィエのように、動物界・植物界が神の手による創造の産物である、と信じて疑わない研究者も存在していました。それに対し、ラマルクは、『動物哲学』の中では、神の介入を慎重に避けて論述しています。生物は、彼によれば、「自然界の産物」なのです。
 
 「想像力」と「理性」が自然科学において不可欠である、とするラマルクの見解は、その著作『動物哲学』で提示されている、彼の「動物の自然分類体系」や「進化学説」の主張が形成されてきた、彼の研究姿勢を反映しているように感じられます。
 個々の生物種の間に、なんらかの共通性を求め、階層的な分類枠を設定していくには、どこかで論理的思考に"飛躍"が入り込むはずです(例えば、分類基準としてどの形質を重視すべきか、という判断は、論理のみでは決定できません)。また、綱区分された分類群を、時間軸上に展開する際にも、やはり"飛躍"が必要になります。そこに「想像力」が働くわけですが、それに対して、彼なりの、理性的な制御を行っていた、ということなのでしょう。
 そのラマルク本人の研究の進展を振り返って、自然科学の在り方にまで一般化して語ったのが、この節の後半部分の議論であった、と私には思われました。
 
 ラマルクの科学に関する議論は、のちの時代のフランスで現れてくる、ベルクソンやバシュラールなどの科学論の先駆けのような考察がなされています。
 ラマルクは、進化論の先駆者として有名ですが、進化論のみならず、「知性や意識の進化的起源」の問題や、自然科学における「想像力」の役割の議論についても、先駆者であった、と言ってもおかしくはないでしょう。
 
 ところで、このブログ記事でも、私の「想像力」が滲み出てしまいましたが、「理性」による統御が適切になされていたでしょうか?


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