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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

仏教における宗派や見解への固執 

Posted on 09:18:58

 
 前回の<仏教学的知識の限界>続きです。
 前回は、仏教学的知識が、場合によっては有害な作用をなすこともある、という趣旨の話をしました。今回は、仏教界や仏教学研究者の中にも、自分たちの見解に対する依存心や執着がみられることがある、という内容を論じてみます。

 
 さて、前回取り上げた、『シリーズ大乗仏教8 如来蔵と仏性』(春秋社、2014年)という書物の中に、異彩を放つ章がひとつありました。松本史朗氏の「如来蔵と空」という論考です。
 松本氏は、如来蔵は「空」とは矛盾し、仏教の無我説によって否定されたアートマン(我)を持ち込んでしまっている、と主張しています(同書、p.250)。また、「如来蔵思想とは、ヒンドゥー教からの影響を受けて仏教内に生じたヒンドゥー教的一元論であり、ヒンドゥー教のブラフマン=アートマン論の仏教版に他ならない」と見ています(p.258)
 実に興味深い見解です。
 こうした彼の見解に対しては、予想がつくことですが、他の仏教学者からの批判・反論があるようです。前回紹介した研究者、下田正弘氏も、その批判者の一人です。
 私には、如来蔵がアートマンと本質的に同類の概念か否かは、判断がつきません。しかし、如来蔵思想を学び、理解し、その思想を自らの生き方に反映させようとする人間ならば、実質的にブラフマン=アートマン論と同質の思想として受け止めるに違いないと思います。
 その意味では、如来蔵思想は、仏教の無我論とは確実に対立します。
 ただし、私は、如来蔵思想には短所のみならず大きな利点もある、と見ていますから(※)、隠れた自我が温存されてしまいがち、という理由のみで如来蔵思想を切り捨てるつもりはありません。また、それが本質的にヒンドゥー教の思想だとしても、私は仏教信者でもなく、仏教徒でもない(特定の仏教組織には属していない)ので、それはどうでもよいことです。
 
ブログ記事<如来蔵思想の効用と短所―他者への寛容と自我への執着―>をご参照ください。その記事の内容以外にも、如来蔵思想には、思想の分かりやすさ、煩悩の崩落に効果がある(素人の実感)、という長所があります。
 
 やはり、肝要なことは、仏教思想であろうとヒンドゥー教思想であろうと、その思想を自らの人生に生かせるかどうか、精神の変容につながるか否か、ではないでしょうか。私は、松本氏の論考から、如来蔵思想には慢心を招く惧れがあるから注意せよ、という教訓を勝手に頂戴しました。
 
 上述のように、如来蔵思想と無我説をめぐって、仏教学者の間に見解の相違があり、論争が生じています。大乗仏教思想のひとつの大きな潮流である如来蔵思想が、ヒンドゥー教からの多大な影響を被っている、とする主張に我慢ならずに反発し、細部をきちんと検討せずに拒否してしまう仏教学者もいるのかもしれません。
 また、仏教では諸宗派の間での学説の対立も存在します。そうしたことから、仏教学者の中にも「自分の見解」に執着し、利己的自我に囚われている方が結構おられるように、私の眼には映ります(邪推してすみません)
 仏教学研究が、必ずしも仏教的なとらわれない生き方への栄養にはならずに、自らの有する細部にいたる知識や見解(部外者から見れば些末な事柄)に価値を置きすぎるあまり、我執を強化してしまっているのではないか、と危惧します。
 一部かもしれませんが、仏教学者は、仏教や自らの研究流派の準拠枠に依存しすぎているように、傍からみると思われます。言い換えると、自分たちの教えの正しさに固執しすぎているように見えるのです。ひょっとすると、その囚われに無自覚なのかもしれません。
(彼らへの批判は、実は、研究者としての私自身への戒めでもあります)
 
 学問的知識の限界性や弊害をわきまえて、仏教学研究とは距離を置いて付き合った方がよさそうだ、と感じるようになった次第です。
 
教訓①:学者は(私を含め)、自らの知識や見解に執着してしまうことがある。注意しよう。
教訓②:学者は(私を含め)、自分たちの研究領域や流派の枠組に依存しすぎ、内部批判する精神を忘れてしまいがちである。注意しよう。
 

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ジャンル - 学問・文化・芸術

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