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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

フランク≪交響曲ニ短調≫第1楽章にみる短3度関係 

Posted on 09:14:50

 
 このセザール・フランクの交響曲を、私は異なる指揮者・オーケストラの演奏を聴き比べ、スコアを参照しながら、細部にいたるまで丁寧に聴いてきました。フランクの代表的作品だけあって、フランクの魅力が全開の楽曲です。
 とりわけ第1楽章では、転調の仕掛けが実に味わい深く、日曜作曲家としてその構造を分析・把握したくなります。

 
 この交響曲の第1楽章内には、様々なタイプの転調が含まれていますが、その中でも鍵となるのが、短3度上下の関係です。
 それは、この楽章の大きな構造を構成しているとともに、細部での洒落た転調の連続部分にも確認できます。フランクが、短3度関係に対して相当の愛着を持っていたことが覗われます。
 
 まず、大構造について。
 この楽章は、ソナタ形式の楽章で、[提示部・展開部・再現部・終結部]からなっています。提示部と再現部はそれぞれ、[序・第1主題・第2主題・第3主題]から構成されています。
 提示部では、序と第1主題が繰り返されますが、最初はニ短調、二度目はヘ短調となっていて、短3度上の調で反復されるのです。第2主題と第3主題はともに、ヘ長調です。
 再現部では、第1主題が変ホ短調という変則的な調選択がありますが、それ以外はすべて、繰り返し以降の提示部の調性の、短3度下となっています。一覧表にすると、次のようになります。
 

提示部(反復後)再現部関係
ヘ短調ニ短調短3度下
ヘ短調変ホ短調長2度下
ヘ長調ニ長調短3度下
ヘ長調ニ長調短3度下

 

 このように、楽章全体の大構造として、短3度関係が基軸となっていることを確認できます。
 冒頭の序と第1主題がニ短調ですので、ニ短調で始まり、(短3度上の)ヘ短調とヘ長調を経て、紆余曲折後、(短3度下の)ニ長調で終わる、というのが、全体の調性構造となっています。
(古典派の短調の曲でのソナタ形式のパターンと似ていますが、短3度関係がより補強されています)
 
 それだけではありません。展開部における様々な転調の中でも、とりわけ印象深い連続転調があります。その二つはともに、短3度上下への連続転調なのです。
 

 175小節目以降、第3主題をもとにした管楽器のソロが連続します。[ホルン・オーボエ・フルート]と、ソロが引き継がれます。その際、楽器ごとに異なる調で同じメロディーが奏でられます。順に、[ヘ長調・ニ長調・ロ長調]です。短3度下への連続転調です(音程的には、長6度上への連続転調)
 また、307小節目以降、第3主題の断片が、4小節単位の同じ音型で、調を変えて3度演奏されます(メロディーラインは木管楽器と第1ヴァイオリン)。その際の調性は、[ハ長調・変ホ長調・変ト長調]です。短3度上への連続転調が、きれいに決まった事例です。
 この二つの例のように、フランクは楽曲の細部においても、短3度上下への転調を好んで駆使しているのです。
 
 第2楽章にも、鮮やかな適用例があります。
 第2楽章は、変ロ短調で始まり、49小節目に変ロ長調に転ずるのですが、その直前、41-46小節が変ニ長調で、47-48小節が変ロ長調の先取りとなっています(3種の管楽器のユニゾン部分)。聴感上は、メロディーラインが半音上がった感じなのですが、スコアを確認すると、短3度下への転調でありました。
 
 ほかのタイプの転調ももちろん、彼は各種用いているのですが(長3度上への連続や、半音上・長2度上など)、この短3度上下こそは、フランクらしさの源ともいえる“御印籠”的な手法といえます。
 短3度上下の転調には、ごく自然に風景が移り変わるような、さりげない味わいがあります。その転調を強調した場合には、新しい世界が立ち現れてくるような、香り立つ場面転換となり得ます。
 日曜作曲家の私にとって、この交響曲は、転調の見本集としても活用できそうです。
 
 
蛇足
 
 2018年1月1日に私は、新作曲、<谷の息吹>―ピアノと管楽のための6重奏曲―を書き上げました。
 そのスコア書きの途上でフランクの交響曲を聴き込んだこともあり、フランク的な転調を展開部と終結部に大々的に導入してしまいました(提示部と再現部は、古典派的な構成です)。
 短3度関係の転調はもちろん、それ以外の転調パターンも、フランクに学び、活用しています。
 <谷の息吹>は、1月7日に公開しました。



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