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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

氷期と間氷期の気候変動と、離心率変化、CO2濃度変化 

Posted on 12:26:42

 
 およそ40万年前から現在に至るまで、氷期と間氷期が周期的に訪れてきました。その気候変動の周期と、太陽を回る地球の公転軌道の離心率変化には、明瞭な相関があります。 また、その時期における気候変動と、CO2濃度の変動の間にも、細部にいたるまでの相関があります。
 これら三者の関係を、どのように理解したらよいでしょうか。

 

気温と離心率の変動 
(中川毅『人類と気候の10万年史』講談社、2017年、p.60より、クリックで拡大、以下同様)

 
 上のグラフは、過去40万年の間の、地球公転軌道の離心率変化と、地球の気温変化の推測グラフです。
 気温の変化は、南極の氷床コア中の酸素18同位体の存在比率から推測したもので、グリーンランドの氷床からのデータや、花粉分析などのその他の代替指標と、トレンドの傾向がよく似ているため、信頼度は高いといえます。
 もう一方の離心率の変化とは、太陽の周りをまわる地球の公転軌道は楕円軌道なのですが、約10万年の周期で、円に近づいたり、やや細長くなったりする、という変動です。その主原因は、外惑星、木星や土星の引力の作用によるようです。
 離心率変化と、地軸の傾きの変化、地軸の歳差運動は、数万年から数十万年の単位で、周期的に起こっている現象です。これら周期的変動を、ミランコビッチ・サイクルといいます。
 そのミランコビッチ・サイクルのひとつ、離心率変化が極値をとる時期と、氷期と間氷期の周期における気温が極値をとる時期とが、かなり良い対応をしていることがわかります。どちらも、およそ10万年の周期です。
 グラフ全体の形は似ていませんが、ピークの時期が近いということは、離心率の変化が、氷期から間氷期へ、間氷期から氷期への移行の引き金、あるいは誘因となっていると考えられます。
(逆の因果関係、すなわち、氷期と間氷期の変動が、地球の公転軌道に影響を及ぼす、という因果関係はありえないでしょう)
 離心率が変動することで、太陽から地球への光エネルギーの放射量も、地球の地域ごとに条件は異なるものの、周期的に変動することなります。その結果、円軌道に近づいていく時期に、高緯度地方の氷床が発達しやすくなると推定されます。
 

地球公転軌道の離心率変化
(同書、p.35より)

 
 そして、地球の表面積に占める氷床の割合がある水準を超えると、太陽光をより反射しやすくなるため、受け取る放射量がさらに少なくなる、という正のフィードバックが作用し、急速に氷期に突入するのでしょう。
(10万年周期と対応していない、もっと短い時間単位の気温の変動に関しては、ミランコビッチ・サイクルのほかのふたつの効果や、太陽活動の千年単位の周期的変動や、突発的な巨大火山噴火などの諸要因が考えられるでしょう)
 
 さて、上記の相関以外に、氷期と間氷期の気候変動と極めて良い相関を示すデータに、CO2濃度の変動があります。次のグラフをご覧ください(単位は千年。65万年前からです。南極の氷床コア中に封じ込められていた、昔の空気中のCO2の濃度の変動との相関です)
 

過去65万年間の気温とCO2濃度
(丸山茂徳『21世紀地球寒冷化と国際変動予測』東信堂、2015年、p.20より)

 
 かなりの細部まで、千年単位の時間で相関関係を見て取ることができます。それとともに、CO2濃度の変動にも、大きな10万年単位の周期があることがわかります。
 その10万年単位の周期的変動に着目すると、3種の変数の間に相関があることになります。
 離心率の変化(A)、気温の変動(B)、CO2濃度の変動(C)。これらの間には、何らかの因果関係があると考えるのが自然でしょう。
 (A)⇒(B)の影響関係は確実です。それらと相関のある(C)は、地球内部での物質循環にかかわる事柄ですから、(A)に影響を及ぼしたり、(A)を直接の原因とする結果であったりすることはないでしょう。
 したがって、(C)は、(B)の変化と連動し、(B)を原因とする結果である、と理解するのが適切と思われます。
 よって、因果連鎖は次のように推測されます。
 
 (A)⇒(B)⇒(C)
 
 (B)⇒(C)の因果関係は、理論的にも、槌田敦氏が提案したように、海水温の変化に伴うCO2の溶解度変化で説明ができます。海水温が上昇すると、気体の溶解度が低下し(ヘンリーの法則)、海水中に大量に溶存しているCO2が大気中に放出されやすくなる、という理屈です。
(槌田敦『CO2温暖化説は間違っている』ほたる出版、2006年)
 
 ところで、気温の変動(B)とCO2濃度の変動(C)との因果関係を、上記のように、(B)⇒(C)と判定するのが妥当であるならば、20世紀の地球温暖化を説明する「CO2主原因説」の根拠のひとつが揺らいできます。
 時間的スケールは異なるものの、20世紀においても、(B)と(C)の相関関係が認められました。両者とも、上昇傾向がありました。しかしながら、相関関係があるだけでは、どちらが原因でどちらが結果であるかは、すぐさま判定できるわけではありません。理論的には、どちらを原因とする説明も、可能です。
 そして、少なくとも過去数十万年の氷期と間氷期の変動期におけるCO2濃度の変化は、気温の変化の結果であった可能性が高いのです。
 したがって、20世紀における相関についても、(B)⇒(C)の因果関係をすぐさま排除してしまうわけにはいかないでしょう。むしろ、その因果関係が20世紀においても作用していた、と推定する方が無理がありません。
 20世紀でのCO2濃度の上昇には、人間の活動由来のCO2が上乗せされているのは間違いないでしょうが、因果連鎖の大勢が(B)⇒(C)であるならば、上乗せ分のCO2によって気温上昇が起こるか、あるいはどの程度上昇するかは、判断できませんから、「人間の活動が主原因で地球が温暖化した」という命題は説得力を失います。
 一方、20世紀においても、気温の変動(B)をもたらした主原因の候補が存在します。太陽活動の変動(D)です。
 太陽の黒点数の変動や、黒点周期の変化などの太陽活動の指標と、過去400年の気候変動との相関は、極めて良いことがわかっています。
 

太陽放射と地球平均気温
(同書、p.53より)

 
 (D)を、20世紀の気候変動の主原因と仮定しますと、因果連鎖は次のようになります。
 
(D)⇒(B)⇒(C)
 
 このように、20世紀の温暖化を説明する仮説としては、「太陽活動主原因説」の方が、「CO2主原因説」よりも説得力があり、地球軌道の周期的変化とも整合的に理解できる、と私は考えます。
 少なくとも、地球温暖化の要因論に関しては、現在流通している通説は定説ではなく、「複数の仮説の間で論争中」と見るべきである、と、科学史研究者の私は判断しています。
 
 まとめます。
 地球の気候変動の主原因として、数千年から数万年の時間スケールでは、ミランコビッチ・サイクルが考えられます。数十年から数百年単位では、太陽活動の変動が主原因でしょう。
 二酸化炭素濃度の変動と気候変動との相関は、それらの主原因による変動の結果、と捉えると、(A)から(D)の間の相関関係を矛盾なく説明できることになります。
 20世紀の地球温暖化に対する要因論は複数あり、論争中、と見るべきでしょう。
 地球に気候変動をもたらす要因は複数あり、どれが主要因であるかは、時間的スケールの取り方によって変わってくる、と理解するのが科学的には妥当であると思われます。


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