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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

惑星と旋法との照応―惑星の音楽のルネサンス版― 

Posted on 09:16:27

 
 古代ギリシア、ピュタゴラスやプラトンの時代より、天体の運行と音楽的な協和との間には関連があると想定されてきました。近世には、17世紀初頭、楕円軌道論を提起したケプラーが、「惑星の音楽」を『宇宙の調和』に書き記しました。
 その100年ほど前、ルネサンス期には、著名な音楽理論家ガッフーリオによって、ケプラーの「惑星の音楽」の祖先形のような発想が描かれていました。
 今回は、そのガッフーリオによる「惑星の旋法」のアイディアを紹介することにします。

 
 フランキーノ・ガッフーリオ(Franchino Gaffurio, 1451-1522)は、世紀の変わり目前後に、音楽関連の著作を数冊残しています。彼の理論書は、15世紀末葉から16世紀初頭において、「もっとも影響力の大きいものであった」といわれています。
(グラウト/パリスカ、戸田幸策他訳『新西洋音楽史 上』音楽之友社、1998年、pp,199-200)
 そのガッフーリオの『音楽の実際』Practica Musice, 1496)という著作に、注目すべき図版が掲載されています。
 
ガッフーリオの惑星と旋法との対応
(P.Pesic, Music and the Making of Modern Science, The MIT Press, 2014, p.36, より孫引き、クリックで拡大)
 
 この図版の右半分を見ると、5つの惑星と、月、太陽と恒星天球が描かれ、それぞれに対応する教会旋法の名称が記されています。たとえば、下から4番目の太陽は、ドリア旋法と結びついています。
 右半分を、日本語に訳してみます。
 
 恒星天球―超ミクソリディア旋法(*)
 土星―ミクソリディア旋法[ソ]
 木星―リディア旋法[ファ]
 火星―フリギア旋法[ミ]
 太陽―ドリア旋法[レ]
 金星―ヒポリディア旋法[ド]
 水星―ヒポフリギア旋法[シ]
 月―ヒポドリア旋法[ラ]
 
超ミクソリディア旋法が、ヒポミクソリディア旋法を指しているのか否かは私には不明です。
[]内の階名は、各旋法の音階の開始音。森が補ったものです。
 
 この図版からは、様々なことが読み取れます。3点指摘します。
 まず、月の下に四元素に取り囲まれた地球があることから、宇宙像としてはアリストテレス流の天動説(地球中心説)であることがわかります。
 また、旋法の中にイオニア旋法とエオリア旋法が存在していないことから、その2つの旋法が認知され導入される以前の、8種の教会旋法の枠組に準拠していることもわかります。
 したがって、この星々と旋法との対応は、伝統的な宇宙観と旋法理論に依拠している図式であるといえます(15世紀末という時代からすれば当然です)
 さらに、月から土星まで、音の高さが高くなっていきます。
 それぞれの星(の天球)が運行に伴い、異なる旋法を奏で、遠くの星ほど高い音を発している、とガッフーリオは考えていたのでしょう。
 ルネサンス期においても、宇宙の構造と運行には、音楽的な組織や時間的変化との類似性がある、と了解されていたのは、この例からも明らかです。
 
 ガッフーリオは、ヴィンチェンツォ・ガリレオの著作『古代と今日の音楽の対話』(1580年)にもたびたび言及されているように、音楽史と科学史の双方に何らかの影響を残した人物です。その彼が、このような「惑星と旋法との照応」の観念を抱いていたことは、歴史的には軽視できないことだと思われます。
 
次回に続く(次回は、上記の「惑星と旋法との照応」と、ケプラーの「惑星の音楽」との比較を行います)
 
参考までに、上掲の図版の左半分では、太陽神アポロンに使える女神(ムーサ)たちと、ギリシアの音階との対応が記されています。こちらも興味深いのですが、今回は省略しました。
 
8種の教会旋法(久保田慶一『キーワード150音楽通論』アルテスパブリッシング、2009年、p.92より)

 
教会旋法1  

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