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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

「作曲についての目的」と「作曲の目的」 

Posted on 11:11:34

 
 作曲家の近藤譲さんが、「目的性のない行為としての音楽」という論考の中で、上記の2つの目的を区別して使い分けています(近藤譲『聴く人』アルテスパブリッシング、2013年、Ⅲ章、pp.101-103)
 「作曲についての目的」「作曲の目的」の使い分けを議論の梃子として、近藤氏はややアクロバティックな論理を展開し、「作曲とは目的のない行為」(p.109)であるという持論にたどり着きます。
 今回のブログでは、近藤氏のその論旨を追うことはせず、彼が用いた作曲行為に関する目的の概念区分を借用して、私自身の作曲に対する意識を振り返ってみたいと思います。

 
 では、「作曲についての目的」と「作曲の目的」は、どう違うのでしょうか。
 この点については、近藤氏の議論をたどることにします。
 彼は、ストラヴィンスキーの形式主義的な作曲における目的を例にとり、ストラヴィンスキーにおける「作曲についての目的」は、彼の「思想の具現化」(p.103)であり、その思想とは「事象の中に秩序を作り上げること」(p.102)である、と捉えています。
 それに対し、ストラヴィンスキーにおける「作曲の目的」は、「具体的な個々の曲を、他とは異なる個別的存在である一曲一曲を作る行為」(p.103)であり、「作品(独自性のある自律的な音構成)を作ること」(同上、()内は近藤の原文)である、と述べています。
 言い換えれば、「作曲についての目的」とは、作曲者がなぜ作曲という営為に取り組むのか、という一般的なスタンス、あるいは哲学を問題にしているのに対して、「作曲の目的」とは、個別具体的な、目の前にある作品になぜ取り組んでいるのか、という問いである、と近藤氏は概念区分していると判断できます。
 
 ここから先は、近藤氏の議論から離れて、この2つの目的の区分を、作曲修行者である私自身の行為に振り向けてみます。
 私にとっての「作曲についての目的」は、音楽を通して世界と共感すること、生物界・自然界の多様性を礼賛すること、人類にも分け与えられている生命の潮流との交感を表現すること、といった事柄になるでしょう。さらに言えば、私を通して立ち現れてきた音楽世界を聴き手と分かち合うことも含まれるでしょう。
 つまり、私自身の有する音楽的世界観の表明と共有です。
 ただし、その世界観は最初から確固たるものが出来上がっているわけではなく、作曲や人生経験の積み重ねの過程で、生成変容していくものです。
 それに対し、私にとっての「作曲の目的」は、曲ごとに異なります。<丹頂の輪舞><イルカの旅立ち>では、丹頂鶴やイルカのもつ「命の煌めき」を表現しようと試みました。
 生命力の発露の感触は、言語では表現しづらいですが、音楽によって何らかの内容を表現できるように感じます。おそらく、聴き手に応じて、その受け取り方に違いはあると思いますが、それでも違いはある程度の範囲内に収まり、表現したい内容の一部分は聴き手に届いているのではないかと想像しています。
 また、<高原の風><山の霊>では、高原や山岳地帯の存在感覚、風景世界の中に溶け込んでいく陶酔感、といった、世界との交感を描こうとしました。
 つまり、私の場合、「作曲の目的」は、相当濃密にある表現したい個別的内容を描き出すこと、といえます。
 したがって、近藤氏の「作曲とは目的のない行為」という作曲観とは対極的な(伝統的・保守的な)音楽観を、私は持っていることが自覚できました(私は標題音楽派ですから、当然といえば当然です)
 
 とはいうものの、それら2つの作曲に関する目的をなぜ実現したいのか、と問われれば、そのような営為が、「私にとって修行であり、愉しみでもあるから」と答えることでしょう。
 作曲とは自己修練であり、余暇の過ごし方でもあります。
 さらに突き詰めると、何のために自己修練をするのでしょうか。それには目的はありません。それ自体が目的としか言いようがありません。
 ということはやはり、作曲は作曲自体が目的であり、それ以外の目的はない、という近藤氏の見解に意外と近いのかもしれません。


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