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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

人工知能は優秀だが、頭脳の働きの全体を模倣しているのではない 

Posted on 11:31:34

 
 前回のブログ記事「生物機械論と自然界」の中で、
「人間の技術は、自然界のなかの、わかりやすい部分から順に、機械化を進めてきた」
といった趣旨ことを記しました。
 このことは、人工知能(AI)の開発に関しても、同様に考えられます。

 今日の人工知能の代表的な2つの事例について、検討してみます。
 まず、自動運転する車に搭載されている人工知能について。
 AI搭載の自動運転車では、交通状況における、変化する多様な情報を瞬時に判断し、リアルタイムで適切に反応することができるようになりつつあります。欧米や日本では、完全自動運転車による公道走行実験が、行われるようになりました。
 車の運転の場合、人間は、主に視覚に対する刺激に対して、大脳が情報処理・判断を行い、運動神経や筋肉・骨格を介して、自動車を操作しています。単純化すれば、刺激―反応系として、車の運転を図式化できます。
 したがって、原理的には、道路交通における多様な視覚情報の変化パターンをデータとして持ったうえで、それぞれの情報変化に対応する適切な反応ができればいい、ということになります。
 つまり、人間による車の運転を、「刺激―反応系」と見做して、そのシステムを模倣しているわけです。
 ところが、人は運転している際、「嫌な予感がする」といった“虫の知らせ”が働くこともあり、それが危険回避につながることもあることでしょう。
 人間の活動のどんな領域にもつきまとっている、動物的な「カン(勘・直観)の働き」は、人工知能がそのシステムの中に組み入れるのは難しいのではないでしょうか。
 もちろん、自動運転車にそうした機能を組み込まずとも、ある程度は安全に走行できることでしょう(少なくとも、酔っ払い運転や、認知症老人による運転よりはましでしょう)。ここで確認したいのは、AIが、人間の頭脳活動のすべての側面を模倣・補強しているわけではない、ということです。
 人間の知的活動のうちの、機械的に理解できる側面、情報の処理・判断の連鎖でとらえられる側面、言い換えれば、物理的・数学的・論理的に理解できる領域を対象にして、人工知能は活躍の場を見出してきた、と考えられます。
 
 次に、チェスや囲碁などのゲームで圧倒的な強さを発揮するようになった人工知能について、振り返ってみましょう。
 最近(2017年5月)、「アルファ碁」というソフトが、囲碁の「世界最強の棋士」といわれる柯潔に3連勝した、というニュースがありました。チェスでも、世界チャンピオンにAIが勝利しています。
 こうしたゲームにおいては、AIの側の戦略は、過去の膨大な対戦記録をビッグデータとして保有し、対局のそれぞれの局面で、確率的の最善手となる打ち方を選んでいく、という「学習経験に基づく論理的推論」が基本となります。可能な打ち手のそれぞれの場合について、局面の展開を読み、判断を下す、という、人間が行っている知的活動を、高速で、大量のデータ処理として、行っているのでしょう。
 一方、囲碁や将棋のプロの棋士は、すべての可能性をことごとく考え抜いているわけではなさそうです。むしろ、直観的に、大多数の悪手を捨て、少数の可能性のみ、丁寧に先読みをしているらしいです。また、この手は論理的には正しそうだが危険だ、といった「勘」が働くこともあるそうです(米長邦雄氏の著作より)
 つまり、[情報処理+直観]で、人間はこうしたゲームに対処しているのです。
 「直観」の領域も、いずれはその機作が科学的に明らかになるかもしれませんが、現在のところ、それを模倣するような機械やシステムは作れていないでしょう。
 こちらの事例の場合もやはり、人間の頭脳活動の全面ではなく、論理的な情報処理の側面のみを模倣・強化したのが、人工知能によるゲームソフトであったのです。そちらの側面のみで、トッププロと互角に渡り合えるだけの能力を備えたのでした。
 したがって、人工知能の開発は、人間が科学的に、論理的に理解可能な頭脳活動の領域に限って展開されてきた、といえるでしょう。
 それゆえ、人間の知的活動を人間がどこまで分析的に把握できているか、という限界が、その時々の人工知能の限界となることでしょう。
 
 「人間の頭脳、イコール、コンピューター」というのは、短絡的な見解です。人工知能は、人間の頭脳活動のうち、コンピューターの挙動と同様に把握できる領域に関して、模倣・補強をしてきたものなのです。


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