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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

植物と動物、弦楽器と管楽器、神話と音楽 

Posted on 11:51:03

 
 前回のブログ記事「管楽器は動物的、弦楽器は植物的」の続きです。
 今回は、両者の関係性をめぐる議論をしてみようと思います。

 
 前回のブログ記事の要旨は、以下の通りです。
 管楽器は、動物のような中空の管を持ち、動物の動きのような指向性を持った音を出すため、動物的な楽器とみなせる。
 弦楽器は、植物が「独立」栄養であるのと同様に、和音が演奏可能なため一台で[旋律+和声]の楽曲を成立させることができるので、「独立性」が高い。また、植物が生物界の食物連鎖の基盤となっているのと同様に、弦楽器群が管弦楽曲の基盤を提供しているため、両者とも各々の世界の基盤となっている。こうした観点から、弦楽器と植物との類似性が見出されるので、弦楽器を植物的な楽器と見ることができる。
 
 さて今回は、それぞれ2組の関係性に注目してみます。
 すなわち、植物と動物との関係[A]と、弦楽器と管楽器の関係[B]との間の類比に着目してみよう、ということです。
 
植物と動物、弦楽器と管楽器
 
 まず、植物と動物とは、食物連鎖における「生産者」と「消費者」の関係にあります。植物が生産した光合成産物である糖類や穀物を、動物が消費することにより、自然界の物質・エネルギー循環の重要な環が回っているわけです。
 また、植物は大地に根付き、動かない生き物であるのに対して、動物は食料や配偶者を求めて動き回ります。
 したがって、物質循環の観点からも、存在様式からも、植物は基盤的存在であり、動物は依存的存在と見ることができます。動物は地球における“居候”的存在ともいえましょうか。
 
 次に、こうした対比は、弦楽器と管楽器の間にも見て取れます。
 大抵の管弦楽曲では、弦楽器群が、曲の基本骨格を形成しています。そのため弦楽器群は、1曲中の大部分の時間、演奏をしているのが普通です。
 それに対し管楽器群は、弦楽器群に比べると演奏時間は短く、弦楽器群の旋律線やバスラインの輪郭を強調したり、弦楽器群に対する複旋律の役割を果たしたり、時折ソロを演じたりして、曲想の彩りを添えます。
 つまり、弦楽器群と管楽器群は、ある程度役割分担していて、楽曲の基盤を弦楽器が担い、管楽器は色彩に変化をもたらす役割を果たしている、と大まかには図式化できるでしょう。管弦楽曲においては、管楽器は弦楽器に対して依存的存在といえます。
 
 このように、植物と動物との関係[A]と、弦楽器と管楽器の関係[B]との間には、「基盤と依存」関係という類比を見て取ることができます。
 
神話と音楽
 
 続いて、上記の類比を、人類学者レヴィ=ストロースの音楽論と関連づけて考察してみようと思います。
 
 レヴィ=ストロースは、神話と音楽とが似ていることを事あるごとに指摘しています。そして、近代においては、神話の機能を音楽が引き継いだ、と捉えています。
 彼は神話と音楽との類似性として、次のような点を挙げています。
 まず、両者ともに人間の無意識に働きかけること。次に、両者とも「できごとの束」として把握する必要があること。そして、両者とも世界の対比的構造や、人間の両面性に対する自覚を促す機能を有していること。
(詳しくは、6回シリーズで書いたブログ記事、「レヴィ=ストロースの音楽論」の(1)(5)をご参照ください)
 世界の対比的構造や人間の両面性とは、天と地・火と水・陸と海・自然と文化・秩序と渾沌・善悪・父と子・生と死、といった二項対立的な事柄です。レヴィ=ストロースが最も重視していたのは、「自然と文化」の対比であったと思われます。
 それらの対比を、神話では、神話のストーリーの中に配置された、いくつもの「神話素」の対比に託して暗示し、音楽では、ソナタ形式の2つの主題の対比や、フーガによる主題と応答などに託して示唆しているわけです。
 
 このようなレヴィ=ストロースの考察を踏まえて、植物と動物の関係と、弦楽器と管楽器の関係に再び目を移してみましょう。
 植物と動物はともに、神話における主要な素材となっています。もう一方の弦楽器と管楽器は、管弦楽曲における二大楽器群を形成しています。
 神話は、場合に応じて、二項対立を植物と動物に託します。また、音楽においてもしばしば、弦楽器群と管楽器群が対比的に扱われ、世界や精神の対比構造を滲ませます。
 つまり、植物と動物との関係[A]と、弦楽器と管楽器の関係[B]には、すでに検討した「基盤と依存」関係という類似性があるのみならず、神話から音楽へと引き継がれた、二項対立を暗示する機能を担っている、という共通性があったのです。
 我々は大編成の楽曲を聴きながら、知らずのうちに様々な内容を感受していることでしょう。その中では、形式上の対立構造からもたらされたり、楽器編成上の図柄から得られたりる対比が、ある程度のウエートを占めていると思われます。
 したがって、弦楽器と管楽器との対比は、音楽における神話的機能を発揮する上での重要な役割を演じている、とみなせるでしょう。
 言い換えれば、世界の対比的構造や人間の両面性への自覚を、弦楽器と管楽器という編成上の対比が助長している、という一面があるということです。
 やはり、音楽には、人間の成長を促す様々な仕掛けが組み込まれているのです。


 

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