06 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. » 08

作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

管楽器は動物的、弦楽器は植物的 

Posted on 12:01:09

 
 楽器というものは、なんだか生き物に似ています。
 オーケストラ曲のスコアを書き、そののち、生物進化の歴史に関する書物を読んだりすると、楽器が動植物と重なり合って見えてきてしまいます。

 
管楽器と動物
 
 オーケストラのレギュラー楽器である、木管楽器群と金管楽器群は、弦楽器群に比較すると、「動物的」な楽器のように感じます。
 まず、内部に中空の「管」が存在すること。
 管楽器については、日本語の「木管」「金管」という名称からわかるように、この楽器群の最も顕著な、形態上の特徴です。
 そして、動物はたいてい(腔腸動物などを除いて)、口から肛門までの「消化管」を持っています。動物が栄養を吸収し、生存を続けるための、不可欠な器官です。動物とは、内部に中空の「管」を持つ生き物なのです。
 次に、顕著な「指向性」を持つこと。
 管楽器から出される音波は、管の出口の方向に発せられます。クラリネットやトランペットの前方に、音は向かいます。弦楽器の音が、全方位的に拡散するのとは対照的です。
 一方、動物とは文字通り、動く生き物です。その運動方向は、通常は体軸方向に定まっています。頭の正面方向に向かって、動物は動いていきます。指向性があるわけです。
 つまり、管楽器の音の出方と、動物の運動の仕方が似ているのです。
 
 したがって、管楽器とは、動物のような中空の管を持ち、動物が動くように音を出す楽器、と見ることができます。
 
 ついでに言えば、木管楽器は鳥類や草食哺乳類に、金管楽器は爬虫類や肉食哺乳類に、イメージが重なります。鳥の鳴き声は木管楽器との相性が良いし、獰猛な肉食獣の咆哮は、金管楽器でなければうまく表現できないでしょう。
 
弦楽器と植物
 
 上記の類似に対して、ヴァイオリンを筆頭とする弦楽器群は、管楽器群に対して「植物的」な楽器といえましょう。
 まず、「独立性」が高いこと。
 弦楽器は、4本の弦を備えているため、ひとつの楽器で和音を演奏することができます。管楽器では、同時に1音しか発することはできません。
 和声を伴う旋律を楽曲の基本形とするならば、ひとつの管楽器はほかの楽器に「従属」せざるを得ません。ところが弦楽器ならば、バッハの≪無伴奏チェロ組曲≫のように、1台の弦楽器のみで、和声を伴う旋律を演奏可能です。
 一方、植物は、食物連鎖の観点から「独立栄養」とされます。動物が植物に栄養摂取に関して「従属」しているのに対して、植物は光合成能力を持ち、日光と二酸化炭素と水を用いて、自力で(他の生き物に頼らずに)栄養分を獲得します。
 弦楽器と植物はともに、管楽器と動物に比べると「独立性」が高いのです。
 次に、「全方位的」であること。
 すでに指摘したとおり、弦楽器の音は、管楽器とは異なり、指向性があるわけではなく、全方位的に拡がります。
 一方の植物は、形態上、上下の方向性はありますが、前後・左右の方向性はありません。地面の上方から植物を俯瞰すると、方向性は見えなくなります。動物は大地の平面方向に運動しますが、植物は、平面的には指向性がないのです。
 さらに、「群集」を形成する傾向が強いこと。
 2管編成の標準的なオーケストラでは、フルートやトランペットなど、管楽器は各2本が基本です。それに対し、例えば第1ヴァイオリンは、12本程度となり、各パートの“群れ”具合が異なります。弦楽器の方が、「群集」程度が高いといえます。
 それと同様に、動物も群れを作りはしますが、熱帯雨林のような世界中の植生を想い起こすと、植物の「群集」の程度は動物をはるかに上回るでしょう。
 最後に、弦楽器も植物も、その世界の基盤となっていること。
 交響曲を代表とする管弦楽曲では、基本骨格が、弦楽器群で構成されるのが通例です。その上に、管楽器の色取りが付け加えられるわけで、管楽器はいわば“添え物”的存在です。チャイコフスキーの≪弦楽セレナーデ≫のように、管楽器がなくとも重厚な楽曲は成立するのです。
 一方の植物もいうまでもなく、動物と植物の存続のための栄養分を、植物が一手に引き受けて、生産しています。植物が生態系の「生産者」と言われるゆえんです。
 弦楽器も植物も、それぞれが属する世界の「基盤」を提供しているのです。
 
 このように、弦楽器は、独立性・全方位的・群集傾向・世界の基盤となっている、といった点で、植物的な楽器と見ることができます。
 
オーケストラは世界を縮約した小宇宙
 
 さらに、打楽器を擁するオーケストラは、打楽器を「鉱物的」楽器と捉えるならば(*)、植物・動物・鉱物という自然界の3王国を備えた、世界のミニチュア、小宇宙と見ることができるのではないでしょうか。
 歴代の作曲家たちは、管弦楽で、生物界・自然界や、宇宙や天地創造を表現しようと試みてきました。オーケストラの楽器群は、その情熱を託するのにふさわしい存在形態であるように、私には感じられます。
 
音律のない打楽器(スネア・バスドラム・シンバルなど)に関しては、「生命」の宿らない「鉱物」との類比が考えられます。また、とりわけチェレスタやグロッケンのような打楽器の音色は、宝石の煌めきに喩えられるでしょう。


関連記事
スポンサーサイト

テーマ - クラシック

ジャンル - 音楽

△page top

△page top

Secret

△page top

トラックバックURL
→http://wood248.blog.fc2.com/tb.php/202-eabd1e31
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

△page top

カテゴリ

全記事一覧リスト

最新記事

月別アーカイブ

コメントをどうぞ

最新コメント

最新トラックバック