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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

炭水化物ダイエットの人類学的意味 

Posted on 12:13:52

 
 私はかなり痩せているため、ダイエットには関心がないのですが、この「炭水化物ダイエット」の流行、という現象には興味を抱きました。人類の潜在意識に響く、暗黙の志向性を感じ取ったからです。

 
 このダイエットでは、糖質のみならず、穀物由来の素材を中心とする、炭水化物の摂取量を軽減させようと努めます。対象となる食材は、コメ・小麦・トウモロコシや、イモ類などでしょう。
 さて、ホモ・サピエンスの新石器時代以降の文明化の歴史を振り返ってみると、小麦の栽培や稲作などの、農耕の開始が、古代文明を導く重要な出来事でした。今からおよそ1万年前頃から、世界各地で並行的に進行した「農業革命」により、食糧を蓄えることが可能となります。
 その余剰食糧が都市に運び込まれ、古代の文明社会の維持・発展のエネルギー源として使われました。その結果、食糧生産に従事しなくても生活できる都市生活者が出現し、分業が成立したわけです。
 文化(=Culture)は、まさに「耕すこと」から始まりました。
 コメ・小麦・トウモロコシといった貯蔵の利く穀物を大規模に栽培することに成功した民族が、四大文明に代表される古代の文明を導いたのです。そして、それ以前の狩猟・採集による生活から、定住し、穀物栽培を中心とする生活へと移行していきました。
 そのような「自然から文明への移行」の鍵となった、備蓄の利く穀物を、炭水化物ダイエットでは、否定、ないし軽視をしているわけです。
 したがって、このダイエットに裏には、「文明への拒絶」の情念が渦巻いているように思われます。逆から見れば、「狩猟採集時代への郷愁」が潜んでいる、ともいえそうです。狩猟採集時代の食生活をすれば、肥満体になることはまずないでしょう。
 人体中の、内臓の盲目的意志が、文明化と密接に結びつく穀物を拒んでいる。そうした志向性が、炭水化物ダイエットの根にあるのではないでしょうか。
 貯蔵食糧の誕生は、一方では人間の安定的生存の可能性を高め、寿命をおそらくは伸ばし、都市文明の開化に貢献しました。しかしながらその一方、人間は自らを「家畜化」していった、とも言えます。家畜を飼うように、穀物によって、自らを飼い馴らし始めたのです。狩猟・採集時代の“野生”の血は抑圧されてきます。
 そのような、「自己家畜化」の歴史に対する反動も、このダイエットには潜んでいる気がします。
 いずれにしても、このダイエットには、人類が過去に経験してきた、「自然から文明への移行」の過程と関わる、根深いものがあるように、私には感じられます。
 
 「肥満」という、極めて現代文明的な病理に対して、「文明への拒絶」の匂いのする手法で立ち向かおうとしている。それが、炭水化物ダイエットの裏の顔といえるでしょう。 最低限の所有物で生活していこうとする、「ミニマリズム」という生き方とも通底する、文明批判の籠められた営為であると思われます。
 
ただし、ある一つの方針に従って食生活を統御しようとすることは、「頭脳」優位の、文化の側の営為であることは否めません。もし、食生活において、自然と文化との折り合いをつけようとするのならば、内臓の声に耳を澄ませて、その時々に消化管が欲している食材を選ぶようにするのが、望ましいやり方でしょう。
 自己の身体との対話を疎かにしないことこそが、肥満や生活習慣病などの可能性を低減させる最も重要な鍵であろう、と私は思います。


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ジャンル - 学問・文化・芸術

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