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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

音楽表現における対比(2)―主題と変奏― 

Posted on 09:24:06

 
 前回のブログ記事では、音楽表現に見られるさまざまな対比が、この世界や人間精神にかかわる二元的構図(光と闇、意識と無意識など)と深い関わりがあるであろうことを論じました。
 今回は、その考察に関連して、前回では取り上げなかった、「主題と変奏」のタイプの対比について、思索を廻らせてみようと思います。横軸(時間軸)方向の対比の1タイプです。

 
 「主題と変奏」のタイプの楽曲の代表格は、クラシック音楽の「変奏曲」でしょう。
 バッハやモーツァルトには多くの変奏曲があります(<ゴルトベルク変奏曲>、<きらきら星変奏曲>など)。また、交響曲や協奏曲、弦楽四重奏曲の楽章にも、変奏曲形式が用いられることがあります。
 変奏では、基本的な和声進行は変えずに、16分音符や3連符を多用したり、リズムを変えたり、楽器編成を変えたりすることが多いですが、和声進行も変えてしまうこともあります(モーツァルトの、ピアノとヴァイオリンのためのソナタ<泉のほとりにて>では、ト短調の曲の間に、ト長調のヴァリエーションが挟まります)
 また、モダン・ジャズの一般的な演奏形態も、「主題と変奏」のパターンに大抵は収まります。提示されたテーマのコード進行に基づいて、アドリブが繰りひろげられます(パッヘルベルの<カノン>のタイプ)
 
 このような、「主題と変奏」の音楽形式もまた、この世界や人間精神の存在様式のある種の側面が、反映されているように思われます。
 まず、変奏部においては、主題を「崩す」作業がなされます。その意味で、「主題と変奏」は、楷書と行書、ブロック体と筆記体、漢字とひらがな、などと類比的です。この構図は、フォーマルとカジュアル、秩序と混乱、建前と本音、緊張と弛緩、交感神経と副交感神経、といった二元的図式と連動しているようです。
 そして、最後に主題を再現して、逸脱からの復帰を果たします。原点に立ち返る、というのも、精神活動の基本に相応するでしょう。あるいは、季節の循環などの世界の回帰性とも対応します。
 
 また、変奏部において、複雑化が進行することもありますが、確実に進行するのは「多様化」です。変奏曲での「多様化」の過程を味わっていると、生物の進化の一側面を想い起こすことがあります。
 生物進化にも、複雑化とともに、多様化の側面があります。たとえば、哺乳動物の祖先はネズミほどの小型動物だったらしいですが、恐竜の絶滅以降、地質年代での新生代において、多様化を果たしました。森林や草原へ、海の中へ、さらには土の中や空中へと、適応放散が進みました。
 馬やライオンや、象やアシカやモグラや蝙蝠らの存在は、おそらくは共通祖先から、長い歳月をかけて生存環境に適応する形態へと変容を遂げた産物なのです。
 この過程は、「主題と変奏」と類比的です。
 あるいは、脊椎動物の分類群の、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類も、「脊椎模型」を主題とする変奏、と見ることもできるでしょう。相同器官の存在(前肢と翼とひれの関係など)が、共通する和声進行のような役割を演じています。
 変奏曲には、「多様性礼賛」の精神が宿っている、とでも言えましょうか。
 
 上記のように、音楽表現における「主題と変奏」の対比もまた、この世界や人間精神におけるさまざまな存立構造の暗喩になっている、と私には感じられます。


 

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