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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

レヴィ=ストロースの音楽論(2)―作曲家の分類― 

Posted on 11:36:57

 
 西洋音楽に造詣の深い人類学者、レヴィ=ストロースは、作曲家の分類を試みています。構造主義的観点のもと、自らの武器の切れ味を試している、といった印象を受けました。

 
 『神話論理』の第1巻の「序曲」において、神話と音楽との結びつきが論じられています前回のブログ記事をご参照ください)。その末尾近くで、作曲家を、「それぞれが伝えている情報の違い」によって、3グループに分類しています(レヴィ=ストロース、早水洋太郎訳『神話論理Ⅰ・生のものと火を通したもの』みすず書房、2006年、p.44)
 それらを列挙してみます。
 
1.「コードの」音楽家。バッハ、ストラヴィンスキー。
2.「メッセージの」音楽家。ベートーヴェン、ラヴェル。
3.「神話の」音楽家。ヴァーグナー、ドビュッシー。
 
 第1群の作曲家は、作品を通して「ある特定の音楽の言説の規則を明示し解説している」タイプです。それぞれの音楽言語の構造がはっきりわかるような作品作りをしている、という共通性を見て取っているのでしょう。
 第2群の作曲家は、「物語る」タイプです。作品に様々な主張や時代の動向が込められている、ということでしょうか。
 第3群の作曲家は、「語りの秩序にすでに組み込まれている要素を使って、自分たちのメッセージをコード化している」タイプ、とレヴィ=ストロースは説明しています。音楽メッセージを構造化している、あるいはメタ音楽化―1ランク階層が上位の音楽構造を組織化―している、ということでしょう。
 ヴァーグナーとドビュッシーはともに、神話性の濃厚な楽劇やオペラを創作しています。それらの作品を念頭において、「神話の」音楽家というカテゴリーを設けたのでしょう。
 構造主義の思想家らしく、言語機能の分析に用いたであろう道具立てで、作曲家の再配置がなされた様子がうかがえます。時代別という時間軸に基づく分類から離れ、異なる視座から再構成された配置は、何とも興味深いものでした。
 
[余興]
 
 ここから先は、レヴィ=ストロースの発想に刺激を受けた私が、その議論に少しばかり上乗せしたい事柄を書き足していきます。
 
 さて、3つのカテゴリーに代表的作曲家を二人ずつ、レヴィ=ストロースは配当していますが、それぞれの群に、もう一人ずつ、私の判断で追加してみます。
 第1群には、フランツ・リストを追加したい。リストは、その後リヒャルト・シュトラウスらに引き継がれる「交響詩」という様式を開拓しました。また、19世紀末以降や、20世紀の映画音楽で用いられるような、斬新で奇抜な和音を活用し始めました。その意味で、新たな「コード」を提示した作曲家といえるでしょう。
 第2群には、グスタフ・マーラーを入れたい。彼のどの交響曲も、ストーリー性が強く、また20世紀の初頭のヨーロッパの同時代を反映ないし予期していた作品、と感じられるからです。
 第3群には、セザール・フランクを加えたい。彼の代表的交響詩、合唱付きの「プシシェ」は、まさに神話を題材にし、さまざまな音楽要素が組織構造化された作品である、と私には映ります。また、彼のそれ以外の交響詩からも、同様な感興が到来します。
 
 次に、もう一つのカテゴリー、第4群を設定してみよう、と思いつきました。
 
4.「自然発生の」音楽家。
 
 コードやメッセージ性や構造化の観点とは別に、音楽から受ける自発性、自律性の感触の強い作曲家たちがいます。おそらく、作曲の過程で次から次へとメロディーが浮かび、それらをほとんど修正せずにスコアに残してきたように感じられるタイプです。
 すぐに5人以上の名前が思いつきましたが、次の3名に絞ることにしました。
 
 ヘンデル、モーツァルト、シューベルト。
 
 レヴィ=ストロースの観点からは、ずれてしまったようです。
 「余興」として受け取ってください。


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