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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

理系・文系という枠組をめぐって 

Posted on 06:39:21

 
 私は、「科学史」という分野を研究しています。そのためか、自分が理系なのか文系なのか、よくわかりません。科学史のように、「理系・文系」という区分枠組に馴染みにくい研究分野や職業が、この社会には実は結構ありそうです。

 
 なぜ、この枠組がこの世に存在し、高校生の頃に自分の進路をどちらかに決定することが要請されるのでしょうか。
 その最大の要因は、社会における職業に、「理系的職業」や「文系的職業」があるからでしょう。医者や機械技術者を目指すならば、主に理系の科目を勉強して、理系の学部に進学し、弁護士や経営者を目指すならば、主に文系の学問を習得する、といった具合です。
 ところが、私のように、高校時代にこの二分法を了承しづらい人間がいます。社会的要請に、自らを押し込めるのが苦手なタイプです。歴史や哲学にも、物理や生物にも興味があり、それらを皆勉強してみたい。こうした欲求は、勉強好きな人ならば、ごく自然に湧いてくるものではないでしょうか。
 そういう人は、私がそうであったように、とりあえず、どちらかに属する“フリ”をして、両方を勉強すればいいと思います(私は高校3年生の2月まで、受験先を文学部にするか理学部にするか、判断を保留していました。結局、理学部に進学したのですが、実験ができる、というのが最大の理由でした。理学部に行っても哲学の勉強はできるが、文学部に行くと実験するのは難しい、という判断です)
 「男と女」という区分に馴染みにくい人がいるのと同様に、「理系と文系」という区分にも居心地悪さを感じるタイプがいるのは確かです。
 
 その一方、社会の側の理系・文系も、それほど画然と分かれているわけではありません。
 私の職場である大学でも、双方の素養が求められる研究分野は科学史以外にも結構あります。たとえば、文系の分野とみなされるであろう考古学では、「放射年代測定法」という実験的手法を駆使します。また、心理学では、マウスを用いた実験を行います。
 逆に、数学では実験を行わず、紙と鉛筆だけで研究を行えます。ということは、数学は実は「文系的」理系科目なのではないか、という疑いが出てきます。
 
歴史的には、17世紀の近代科学の成立が、実験と数学的手法の確立と、深い結びつきがありました。その結果、「理系」を満たす要件が、「実験」と「数学」となりました。その一方しか満たしていない分野をどう判断するか、悩ましい問題です。
 
 職業にしても、IT技術を駆使する経営者はざらにいます。また、原子力工学の技術者ならば、原爆や原発開発の歴史的経緯や近代史の展開をよく心得ていることが望ましいでしょう。裁判官に科学的リテラシーが要求されるケースも、現代ではしばしばあります(公害裁判や原発差し止め訴訟など)
 つまり、社会の現場には、理系と文系の両方の素養が求められる職種が、結構あるのです。
 
 したがって、理系とも文系ともつかない人は、そのことに恥じることなく、「仮に」どちらかに所属しておく、といったスタンスで構わないと思います。研究分野にも職業にも、どっちつかずの分野や両者を必要とするものがあるのですから。あえて社会の用意している硬直化した枠に、自分から進んで入ることはないのではないでしょうか。
 早くから自分の進路を見定めている人にとっては、理系あるいは文系に自分を早めに特化して、自身を専門分化させていく方が、社会的人材として認められやすくなる、という事情は確かにあります。その一方、早々と自分を理系ないし文系と見切ってしまうと、自分の可能性を精神が未成熟のうちに限定してしまいかねません。
 
 高校生の時期に、理系の生徒が歴史を、文系の生徒が物理などを勉強しなくなるのは、実にもったいないことだと思います。双方を学習することは、長期的に見れば、人間精神の「幅」を広げるのに寄与することでしょう。理系・文系の枠に捉われることなく、自身の内在的欲求にしたがって、好きな分野を学習・研究する、というのは、人間的成長にとって実に大事なことだと私は考えます。

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