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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

シンセサイザーの先達、冨田勲さんから学んだこと 

Posted on 10:51:08

 
 5月5日に、シンセサイザーの音楽家で作曲家の冨田勲さんが、逝去されました。
 ご冥福をお祈りいたします。

 
 現在の私の趣味であるささやかな音楽活動は、冨田さんが目指していた方向性に重なり合っています。管弦楽曲を作曲し、その作品を複数のオーケストラ音源を駆使して演奏された音楽に仕上げる、という作業を行っているのですから。
 冨田さんが切り開いた道筋を追随してきた私は、当然のことながら、いろいろと影響を受けてきました。今回はここに、富田さんから私が継承した、音楽制作活動の指針を2点、書き留めておきます。
 
(1) 細部に手間隙を惜しまない。
 
 これは全般的指針です。
「オーケストラは奥が深い」と富田さんは語っておられました。この言葉自体も奥が深く、冨田さんが到達していたであろう了解に、私がどこまで届いているかは、心もとない気がします。私なりに励行しているのは、次のようなことです。
 スコアどおりのデータを音源に演奏させると、リアルな音色を出す音源でも、機械的な演奏になります。大勢の人間が演奏したような音楽にするには、さまざまな工夫が必要となります。
 音の出だしがきれいにそろうのは理想ではありますが、現実のオーケストラではありえません。わずかなズレが伴うものです。それゆえ、ずれすぎてはいけませんが、適度なバラツキがあったほうが、自然な演奏に聴こえます。
 不自然に統率の取れすぎた機械的演奏にならないように、幾分かのズレを導入するわけです。このことは、音の出だしだけではなく、一つひとつの音符の長さや強さについても該当します。
 また、人間の演奏するオーケストラでは、音程を前もって調整していますが、実際には微妙にチューニングはずれているものです。音の高さも完全に合い過ぎていると不自然です。やはり、音源の各楽器の音程を微妙にずらすことによって、オーケストラの肌合いが出てきます。
 さらにまた、パート間の音量バランスも、曲の進行に伴う細やかな調整が要請されてきます。現実のオーケストラ内の楽団員は、他のパートの音を聴きながら、半ば無意識のうちに、自分の発する音量を調整していることでしょう。ところが、機械の演奏ではそのような配慮をしてくれません。そのパートが目立つべきところと背景に徹すべきところでの音量変化を適切に指示しておく必要があるわけです。
 このように、細部に手間隙を惜しまず、演奏表現を現実のオーケストラに近づけていく。この姿勢は、冨田さんから譲り受けたものです。
 
(2) 弦楽合奏では、一人ひとりが各自の音を出す。
 
 こちらは、個別具体的な制作指針です。
 弦楽五部(Violin1, Violin2, Viola, Cello, Contrabass)は、総勢20名から60名程度の奏者からなることが通例です。スコアでは弦楽パートは5段ですが、数十名の演奏者がそのパートを弾くことになります。
 実際のオーケストラでは、一人ひとりの音色の微妙な違いや、演奏の仕方のクセなどがブレンドされ、サウンドカラーが形成されてきます。それに近いシミュレーションをするべきだ、と富田さんは考えていたようです。そして、私もその方針に追随して、弦楽合奏のブレンドを試みています。
 私の用いているソフト音源、Garritan Personal Orchestra では、弦楽合奏向けのInstrument として、Section Strings という楽器群があります。そのなかから、たとえばViolins 1 Lush を選べば、12人に相当する第1ヴァイオリンの音色をひとつのチャンネルのみで発音できます。確かにそれらしい音は出るのですが、ところがその音では、複数の楽器音が溶け合ったりぶつかり合ったりする「ざわめき感」が出てこないのです。また、どうしても“シンセ臭さ”を取り除くことができません。
 そのため、私はSection Strings 内の音色は使用せず、Solo Strings の楽器群の中のソロ楽器をブレンドして、5つのパートそれぞれの音色を作成しています。弦楽五部では、ソロとピツィカート部分を除いて、26チャンネルを使用して演奏させています。それぞれ異なる波形を発するように設定しておきますので、26人の弦楽器奏者がそれぞれ微妙に異なる音色とクセで弾いている状況をシミュレートできるわけです。
(<女鳥羽川の夕暮れ>の演奏改訂版は、26チャンネルで弦楽五部を作成したものです。「<女鳥羽川の夕暮れ>をGarritanとProteusのブレンドオーケストラで」で試聴できます)
 手間隙かかりますが、お仕着せのSection Strings の人工的音色よりも、厚みと芯があり、「ざわめき感」の出る音色にブレンドできたと感じています。
 結局、この具体的指針も、(1)の一般的指針のひとつの例でありました。
 
 冨田さんを見習って、「オーケストラの奥深さ」を、今後も少しずつ掘り進んで行きたいと考えています。


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