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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

タバコと肺がんと寿命をめぐって 

Posted on 09:06:13

 
 最近知られるようになった、喫煙率と肺がん死をめぐる興味深いデータに、次のようなものがあります。
 過去40年ほどの間に、男性の喫煙者数はほぼ半減している一方、肺がん死亡者数は約5倍になっている、という逆相関です。次のグラフをご参照ください。

 

喫煙者率と肺がん死の相関 
(武田邦彦『早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがよい』竹書房、2012年、p13より)
 

 このグラフを素直に解釈すると、武田氏の言うように、「タバコを吸う人が減ると、肺がんが増える」(p.16)ということになるでしょう。少なくとも、肺がんの主原因をタバコに帰するのは、無理がありそうです。
 一見、世間の常識と逆の相関をめぐって、武田氏はさまざまな議論を展開しているのですが、このブログ記事では、武田氏の議論から離れて、この相関のグラフから私が推論したことを書き留めておこうと思います。
 
 相関関係がある場合、どちらが原因であるかは、必ずしも自明ではありません。また、たまたま相関があるだけで、因果関係などない事例もあるでしょう。あるいは、両者とも第三の要因の二つの結果かもしれません。
 このグラフの場合は、「喫煙者の減少」は原因ではなく、結果であろう、と私は推察します。
 何らかの原因で、肺がんが増えつつある。その動向を日本国民が全体として無自覚のうちに感じ取って、タバコは吸わない方がよい、と判断する人が増えた、ということなのではないかと思います。
 では「何らかの原因」とは何でしょうか。
 私に思い当たるのは、次の四つの要因です。
1) 平均寿命が延びたこと。70歳代、80歳代になると、発がん確率が急激に上昇します。
2) 1960年頃以降、世界各地で行われた核実験の影響で、大気中にうっすらとプルトニウム微粒子が拡散してしまったこと。肺に滞留するプルトニウムは、近傍の細胞にα粒子を飛ばし、細胞内のDNAを変質させ、発がんに導く可能性があります。
3) エアコンが普及してきたこと。エアコンで冷暖房がなされた室内では、エアコンのフィルターを通過した空気を吸い続けるわけですから、長期的には気管支や肺胞に微小なダストが蓄積していく可能性があるでしょう。
4) 自動車からの排ガスや粉塵など。
 私にはこれらがどれだけ肺がん死に寄与しているのか、データ的裏づけを出せるわけではありません。また、どの要因が最大の要因なのかも判断できませんし、他の要因もあるかもしれません。しかしながら、総合的には、肺疾患をもたらしかねない要因がじわじわと増えてきたのは確かであろうと考えます。
 おそらく、このような、がんや肺がんへのリスクが少しずつ高まりつつある時代の状況を、日本の人々がなんとなく肌で感じ取って、さらにリスクを増しかねないタバコは控えよう、ということになったのではないでしょうか。
 つまり、上記のグラフの右上がりは、現代文明の時代状況の変化に対応し、右下がりは、その変化に対する身体の集合的反応、と解釈できる、というわけです。
 
 ところで、中南米大陸に起源をもつ喫煙の文化は、世界中に広まりました。もしタバコが人類の生存に決定的に有害であるならば、過去数百年間もの間、喫煙の文化が継続するはずはありません。
 タバコの慣習が世界的に定着したということは、近代文明が許容してきた、とみてもよいでしょう。
 ところが、20世紀の後半、とりわけ先進国では、文明社会の状況が変化し、がんや肺がんのリスクを軽視できなくなりました。かつて、平均寿命が50歳にも満たなかった時代であれば、がんのリスクを考慮する必要はなかったでしょう。ところが、現代社会は違います。
 寿命が延び、死因の3割をがんが占める時代となりました。また、大気中や土壌における放射性物質を無視できる時代に戻るのは不可能となりました。
 喫煙文化が成立していた時代と、現代とは、時代背景が変わってしまったのです。それゆえ、喫煙への姿勢やまなざしも、必然的に変化するでしょう。
 そのような、時代動向の変化を、上記のグラフから私は感じ取ったのでした。


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