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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

モーツァルトとブルックナーとの類似性 

Posted on 09:01:52

 
 古典派と後期ロマン派のこの二人の作曲家は、作風も、オーケストラの編成も異なり、一聴して別のタイプの創作家であることは疑いありません。しかしながら、私は、この二人の間に、本質的な類似性を感じ取ります。住んでいる世界が似ている、とでもいいましょうか。

 
 管弦楽を作曲する場合、ひらめいたいくつかの素材を元に、全体の曲組織を構築していくことになります。敢えて図式的に言いますと、「自然発生的」要素と「構築的」要素の複合で、創作活動は進行していくわけです。どの作曲家も、この二つの要素のバランスをとりながら、譜面を書いているはずです。
 モーツァルトとブルックナーは、作曲年代は100年ほど違いますが、どちらも、それぞれの同時代の作曲家と比較すると、「自然発生的」要素が色濃く作品に浸透している音楽家であると、私は感じています。
 モーツァルトの場合、直前直後の大作曲家、バッハとベートーヴェンは、「知的構築」の側面が、作品の魅力のかなりの部分を占めています。それに比べて、モーツァルトの素晴らしさは、旋律の魅力に負うところが大きいでしょう。そして、その流れるような旋律は、即興的で、あたかもその場で生成したてのメロディーのように聴こえてきます。
 モーツァルトのクラリネット協奏曲の優美な第2楽章や、天使が舞っているような第3楽章を聴くと、ひらめいた曲想をほとんど加工せずに譜面に書き付けたのだろうと感じてしまいます。また、ピアノ協奏曲でも、展開部において次々と新たなモチーフが惜しげもなく投入されてくる様子は、即興演奏を書きとめた譜面を再現しているように感じられます(特に24番)
 丁寧にスコアを検討すれば、モーツァルトも、ソナタ形式楽章では、古典派のソナタ形式の枠を基本的に遵守しつつ作曲していたことがわかります。彼の場合、ひらめいた曲想をあまり歪めることなく、その枠組みに盛り付けることができたのでしょう。そのため、作品からは自然発生的な自在さが感じられてくるのでしょう。
 もう一人のブルックナーの場合、同時代の作曲家、ブラームスとしばしば比較されます。ブラームスの交響曲は明らかに「知的構築」型です。第1番が、ベートーヴェンの第10番と評されたこともあったように、壮大なる曲の構想のもと、緻密に構築された作品の構造が、ブラームスらしさの第一のポイントでしょう。それに比べると、ブルックナーの第一の魅力は、朴訥な主題と、その主題がじわじわと変容を遂げ、悠然と流れる大河にまで成長していく過程にあります(私の感じているブルックナーの魅力については、過去の記事<ブルックナーの交響曲を聴く愉しみ>をご参照ください)
 とりわけ第7番と第8番の交響曲では、若い番号の交響曲でしばしば感じられた作為性が薄らぎ、曲が内在的に「自発的」に成長を遂げていく感触を抱きます。また、この二つの交響曲のアダージョ楽章の比類なき奥深さは、曲想の流れが「自己生成的」であることが大きく貢献しているように思われます。
 小説のなかで、登場人物が小説家の手から放れて、自在に活躍を始めることがよくあるそうですが、それと同様に、曲自体に生命が宿り、その生命体が有する活力に駆動されて音楽が進行していく、といった感覚です。
 ブルックナーも、曲全体の構造を軽視していたわけではなく、ソナタ形式楽章で3つの主題を盛り込んだ複雑な構成を採用したりしていますが、その構造が、聴感上は出しゃばってくることがなく、背景の額縁の役割を果たしている程度です。彼もまた、ひらめいた曲想の素材の自発性を損なわずに、枠組みに盛り付けることができたのでしょう。
 ブルックナーは作品を改訂することでも有名ですが、改訂によってその本質的傾向が変質しているとは思えません。
 
 このように、モーツァルトとブルックナーは、曲想の「自然発生的」側面を色濃く残した作品を書いた創作家、という点で、似ているのです。潜在意識からのインスピレーションをうまく活用できているのでしょう。
 私は、日曜作曲家として、そのような自発性の損なわれていない作品を仕上げたい、という理想を思い描いています。その意味で、この二人の作曲家は、私の師匠なのです。

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