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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

物理学と哲学、生物学と世界史は似ている 

Posted on 09:35:23

 
 高校や大学で当然のごとく用いられている学科の分類枠に、「理系」と「文系」という区分があります。この区分には確かに、実用上の合理性があります。
 しかし、この枠組のみに固着してしまうと、理系と文系にまたがって共通する性質が見えなくなってしまう懸念があります。

 
 大学受験への適性や、本人の学科に対する好悪などの観点からすれば、「理系」と「文系」という区分がなされていることは好都合でしょう。また、学問体系の全体図も、この区分を基にすれば見易くなるのは確かです。
 しかし、その区分とは別に、ある理系の科目とある文系の科目との間に、顕著な類似性が見出される場合があります。その類似性は、私にとっては実に興味深いものです。
 たとえば、物理学と哲学とは、ともに、抽象的思考を学問の中核に据えている、という点において、似ています。物理学の運動論では、個別的な運動事例に共通する運動法則を抽出します。哲学の認識論では、個別的な知覚現象などに共通する原理を把握しようとします。ともに、個別事例よりも法則や原理の探究が重視される分野なのです。
 それに対して、生物学や世界史では、原理的探究がないわけではありませんが、まずは、個別事例の列挙・提示に主眼点が置かれている分野といえるでしょう。哺乳動物の共通性も探りますが、まずは、どのような哺乳動物がこの世界に存在するのか、膨大な事例の蒐集が分類学の出発点です。歴史においても、アナロジカルな法則性を見出す場合もありますが、過去の歴史的事実を、個別の時代・地域において確定していく作業こそが、歴史学の原点でありましょう。
 このように、原理的探究か、個別事例の重視か、という観点からすれば、タイトルに掲げたとおり、「物理学と哲学、生物学と世界史は似ている」のてす。
 
 ちょっとしたきっかけから、この類似性に、私は大学2年生のころ気づきました。そのころ、それまであまり得意ではなかった生物学と世界史の面白さに、ほぼ同時に目覚め(身の回りの現実的な存在や出来事と、生物学や世界史は実に関連性が深いことを、迂闊にもようやく悟った)、なぜなのだろうと考えたからでした。
 私の場合、精神の発達段階として、先に抽象的思考への興味が高校までに開花しており、具体事例への興味が発芽するのがやや遅れていた、というように、今振り返ると了解できます。人によって、その順序が逆の場合もあるかもしれません。
 
 そして、原理的探究を好むタイプがいたり、個別事例の蒐集を得意とする研究者がいたりします。
 たとえば、物理学者が哲学的議論を好む事例には、枚挙に暇がありません。量子力学のハイゼンベルクや、素粒子物理の湯川秀樹さん、近代力学の父・ガリレオなどです。また、哲学者の廣松渉さんは、現代物理学の進展に強い関心を示していました。思考の趨向性が似ているのでしょう。
 それに対して、個別事例への偏愛者として真っ先に思いつくのは、ダーウィンです。ダーウィンは、動物や植物や地質について、該博な知識を所有していました。そして、現在の地球上のさまざまな存在の由来を、「歴史的に」理解しようと試みたのです。
 進化論には法則的探究の側面もありますが、事実の確定も大事です。進化論の確立者・ダーウィンは、生物学と世界史の両者を、自らの武器としていたのでした。
(中学や高校で学習する「世界史」という科目は、実は世界の歴史のほんの一部、文明段階以降の人類の歴史です。射程を遠望すれば、世界の歴史は、ビックバンから始まり、地球の誕生、生命の起源と進化を含む、壮大な歴史となります。「世界」をどう捉えるか、という問題になります)
 古代ギリシアの哲学者の中では、アリストテレスはどちらかといえば、個別事例重視型で、プラトンは原理的探究を好むタイプのように感じます。
 
 このように、理系・文系の枠を取り払ってしまうと、学問領域のタイプとして、抽象的原理・法則の探究を主眼とする分野と、具体的な個別事例の列挙を重視する分野とが存在することがわかります。(また、それら両者の間にも、漸次的に、抽象度・具体度の程度の違いによって、諸科目が位置づけられるでしょう。化学や心理学などは、中間的位置づけでしょうか)
 そして、研究者に応じて、それらへの適性や好みがあることも確かなようです。


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