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作曲と思索の愉しみ

オーケストラ作品の作曲・制作過程や、科学史と音楽史の研究にかかわる記録です。 森さちやの自作曲の公開も行います。 曲と思索を分かち合いたい。

ブラームス交響曲第3番第3楽章、旋律美の極致 

Posted on 09:13:52

 
 2月の下旬になり、多少、仕事の忙しさが軽減され、作曲活動に時間が取れるようになりました。現在、3拍子のしっとりとしたタイプの曲を創作中です(タイトルは未定)
 そこで、その曲を書き進める上で参考になりそうな曲を、思い当たる範囲で聴き込んでみました。そのなかで、最も圧倒されたのが、ブラームスの上記の楽章でした。
 今回は、この第3楽章の魅力を解析してみたいと思います。

 
 全音楽譜出版社のポケットスコア、『ブラームス 交響曲第3番』をチェックしながら、繰り返し聴きました。その結果、この楽章のすばらしさを醸し出している5つのポイントに思い当たりました。
 

(1)主題の旋律自体の絶妙な美しさ
 このことは、一聴すれば、納得できると思います。参考までに、メロディーの楽譜を掲げておきます。哀愁を帯びた、民族音楽風の、ハ短調の主題です。
 

ブラームス交響曲第3番第3楽章の主題 

 

(2)転調による対比
 この楽章の全体は、3部構成になっています。仮に、ABAとしておきます。Aの部分は、aabaという内部構造を持っていて、小文字のaの個所で、主題が登場します。
 aはすべて、ハ短調で書かれています。それに対し、bはハ長調、中間部のBでは変イ長調となっています。どちらも、すっきりと明るい長調ではなく、ブラームスらしい渋いトーンの長調なのですが、ハ短調の悲哀のテーマとは対比的で、主題を引き立たせる効果は十分です。
 

(3)対旋律による絡み
 aの2回目から、対位法による複旋律が絡んできます。これがまた見事に決まっているのです。チェロやファゴットやホルンといった、中低音域の楽器が、もう一つのメロディーラインを同時に形成していきます。2回目のaで、ヴァイオリンの主題と対になって現れるチェロの対旋律には、身震いしてしまいました。
 

(4)メロディーへの楽器配当
 上記の内部構造からわかるように、aは6回現れます。その6回が、すべて異なる楽器(群)によって、テーマが演奏されます。飽きさせない配慮でしょう。その楽器配当にも、手が込んでいるのです。
 1回目は、チェロが中音域でゆったりとテーマを提示します。4回目は、Bの中間部からAへと復帰する再現部の冒頭ですが、意表をついて、ホルンが朗々とメロディーを吹くのです。久々に聴いて、この部分にはびっくりしました。最後の6回目は、第1ヴァイオリンが二手に分かれ(divisi)、オクターヴで演奏し、さらにその1オクターヴ下で、チェロが同じ旋律を弾きます。厚みのある説得力のあるサウンドで、最後のテーマは感動的に演奏されるのです。
 

(5)3分割の入れ子構造
 曲全体が、ABAの3部構成であるうえに、Aの内部も3部構成となっています。また、Bの内部も、短いながら、3部構成(cdc)となっています。そして、3拍子の曲なので、1小節は3拍からなります。「3分割の入れ子構造」が構築されていることがわかります。
 さらに、スコアをよく見ると、伴奏部は3連符だらけで、1拍が3分割されているのです。また、主題の基本単位は12小節で、4小節のまとまりの3つの部分からなっています。徹底して、「3分割の入れ子」を意図的に織り込んでいるのは間違いないでしょう。こうしたことは、聴いていて意識には昇りませんが、作品全体の統一感に効いてくると思われます。
(これらは野球のルールみたいです。ストライク3つでアウト、アウト3つで1回が終了、打者は9人、守備も9人、9回で試合終了)
 それだけではありません。「3」に対するこだわりは、まだあるのです。この曲は、交響曲の第3番第3楽章です。そして、作品番号は、90という3の2乗の倍数なのです!
 この3尽くしの楽曲に、ブラームスは「3分割の入れ子構造」を仕込んだのでした。
 

 上記のうち、(2)(4)(5)のポイントは、今回聴き込んで初めて気がついたことでした。ブラームスの作品構築力の一端を理解することができました。
 これらの点の相乗効果で、極めつきの旋律美が現出することになったのです。
 

 最後に、私の想像を少しだけ、付け加えておきます。
 (1)と(3)の点に関しては、おそらく、自然発生的にブラームスに湧き上がってきたものでしょう。実に自然な流れの主題と対旋律です。その宝石の原石を、(2)(4)(5)の知的構築によって、磨き上げて作品に仕上げたと考えられます。
 作曲というものはやはり、[ひらめき]+[知的構想力]です。この両者がうまくかみ合うと、すばらしい作品が誕生するのでしょう。


 

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